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登録日: 2008.01.20 記事: 2495
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日時: Mon Jun 04, 2018 7:41 pm 記事の件名: もみじは秋の言葉では? 「青もみじ」徒然草にも登場 |
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最近、「青もみじ」という言葉を新聞記事や観光のパンフレットなどでよく目にするが、「もみじ」は秋の言葉ではないのか−。京都市西京区の66歳男性から、こんな疑問が寄せられた。近年、注目を集める「青もみじ」のルーツを追った。
■京都の初夏の観光名所に
みずみずしい若葉と紙屋川にかかる橋の朱色の取り合わせが美しい。北野天満宮(京都市上京区)は3年前から、境内西側にある御土居のもみじ苑を初夏にも公開している。
近年、境内や庭園の新緑のモミジをアピールする社寺が増えている。京都新聞のデータベースで調べると、2006年ごろから「青もみじ」の記事が増えているのが分かる。
京福電鉄(中京区)がこの年、春や秋に比べ観光客が落ち込む初夏の対策にと、嵯峨・嵐山一帯の新たな魅力として取り上げたのがきっかけのようだ。
天竜寺塔頭の宝厳院(右京区)が回遊式庭園「獅子吼(ししく)の庭」の特別公開を始め、源氏物語千年紀と合わせたイベントも行った。
京福電鉄の担当者は「新緑の美しさはもちろんですが、青もみじという心に響く言葉が楽しみ方を広げたのでは」という。
09年からは市観光協会がホームページで積極的に紹介を始め、JR東海も京都誘客キャンペーン「そうだ京都、行こう。」で取り上げるようになった。
市観光協会は「継続的に紹介してきて、観光客の認知度は高まってきた」といい、今年は「主なみどころ」として三千院(左京区)や東福寺(東山区)など50カ所以上の社寺を掲載している。
観光客の玄関口であるJR京都駅ビルには今年、京都府が展開する「森の京都」とともに「青もみじ」をアピールする特設コーナーが設けられている。
■「秋の紅葉にまさる」
叡山電鉄(左京区)が青もみじのトンネルをPRしたり、実相院(同)では磨き込まれた床に映った新緑を楽しむ「床もみじ」が知られるなど、観光資源として定着してきたのは間違いない。
ただ、青もみじは観光用に近年つくられた言葉ではない。広辞苑によると、「青紅葉−(1)まだ紅葉していない楓(かえで)(2)襲(かさね)の色目。表は青、裏は朽葉」とある。
襲とは、平安貴族らが衣を重ねて着る時の色や、衣の表と裏の取り合わせのことで、季節によって決まる。
日本の伝統色を研究する染織家吉岡幸雄さんの著書「王朝のかさね色辞典」(紫紅社)によると、「青紅葉の襲」は夏の色で、青と朽葉のほか萌木と黄など4種類がある。別に「若楓の襲」もあり、こちらは春の色だ。
吉岡さんは「襲は色を組み合わせ、重ね、季節感や花木、景色などを表現した平安貴族のたしなみ。衣装だけでなく、調度品や手紙などにも用いられました。日本の繊細な感性を表現しています」と話す。
俳句では、青もみじに近い「青楓」や「若楓」が夏の季語として使われる。与謝蕪村は三井寺(大津市)でこんな句を詠んでいる。
<三井寺や日は午にせまる若楓>
青もみじをめぐってはこんな話もある。
宇治市笠取地域に、御旅の森と呼ばれる森があり、楓の老木があった。花山天皇が出家して西国霊場を巡った際、笠を取って青葉の美しさを称賛したことから「笠取」が地名になったという。
吉田兼好は「徒然草」一三九段で、「卯月ばかりの若楓、すべて、よろずの花、紅葉にもまさりてめでたきものなり」と、秋の紅葉よりも青もみじが素晴らしいと語っている。
青もみじをより深く楽しむことで、日本古来の色彩感覚や美的感覚、土地に刻まれた歴史などをあらためて学ぶ機会になりそうだ。 |
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