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管理人
日時: Fri Nov 27, 2020 5:02 pm
記事の件名: 幻の文楽、1年越し今度こそ 人形遣い・桐竹勘十郎「神様が時間
チケットは完売だった。人形浄瑠璃文楽で幻といえる2作品が今年2月29日、ロームシアター京都(京都市左京区)で上演されるはずだった。しかし、舞台セットが組み上がり、劇場で稽古に入った本番2日前の夜、コロナ禍のため急きょ中止が決まった。1年後の来年2月末、「今度こそ」の願いを込め、仕切り直しの公演を開く。中心となる人形遣い、桐竹勘十郎(67)は「舞台の神様が『もうちょっと練りなさい』と1年の時間をくれたのかもしれない。いろいろと磨き直したい」と前向きに誓う。人気を受け、公演日も2日間に拡大が決まった。=敬称略
全国で唯一、京都だけの特別な舞台となる。文楽は普段、大阪・国立文楽劇場を本拠地としているが、この公演は、ロームシアター京都が「伝統芸能の継承と創造」を目指すシリーズとして独自に企画製作する。
演目は1934(昭和9)年から上演が途絶えている大曲『木下蔭狭間合戦(このしたかげはざまがっせん) 竹中砦(たけなかとりで)の段』を87年ぶりに復活上演。また普段はチョイ役(端役)に遣われる「つめ人形」が主役への夢を抱く泣き笑いの『端模様夢路門松(つめもようゆめじのかどまつ)』を37年ぶりに上演。2本立てで披露する。
『端模様―』は勘十郎が執筆し、1984年に新作として初演。勘十郎自身、「つめ人形」を持っていた若い下積みの頃の思いも重ねた。「大役を夢見て、毎日怒られながら、しんどい目をしている意味では一緒なんです」と勘十郎。
文楽人形は、人形遣いが3人がかりで操る主役級に対し、「つめ人形」は1人で遣う。『端模様―』の主人公・門松は、いつか伊左衛門(吉田屋)や団七(夏祭浪花鑑(かがみ))といった主役になりたいと憧れる「つめ人形」。楽屋で仲間に冷やかされ、涙をこぼすが、『靭猿(うつぼざる)』の猿たち動物の人形に慰められ…。
さまざまな文楽の演目をパロディーとしてちりばめ、猿や馬、キツネといった人形も活躍する。
京都を拠点に、伝統芸能の魅力を伝える「木ノ下歌舞伎」主宰の木ノ下裕一(35)が今公演のスーパーバイザーに就任。演目選びなど企画に携わり、「文楽初心者でも、通でも楽しめる作品」としてそろえた。
もう一つの『木下蔭狭間―』は、1789(寛政元)年初演。小田春永(織田信長)に仕える此下(このした)当吉(豊臣秀吉)の活躍を描く「太閤記もの」の一つで、ヤマ場『竹中砦の段』は、美濃の斎藤義龍の軍師・竹中官兵衛を中心に、血みどろの謀略が展開する。「戦いで一家が離散する中、幼い孫や家族への情愛が最後に浮かんでくる。そこが大好きなところです」と勘十郎。
ただ、昔はどのように人形を遣っていたか、所作を伝える戦前の資料はほぼ残っていない。官兵衛を遣う勘十郎ら人形遣い一人一人が浄瑠璃を読み込み、役の心、動きを考えた。こうした「自分で作り上げる力」が芸を伝承する上で問われてくるという。
「(浄瑠璃などの)本を読み込み、意味やその裏の裏まで自分で考えないと、そうした力は萎(な)えていく。昭和40年代以降の上演作品は先人の映像が残っており、それを見てまねたら、人形が遣えるような錯覚を起こしがちだけど、大いなる勘違い。今回のような復活や新作の上演は自分で考えたものを出し合う絶好の機会なんです」と勘十郎。
今年2月の本番前の稽古では、それぞれの人形遣いの動きを見て、「役を捉えられている」と手応えを感じていた。直前での中止は「声も出なかった」というが、コロナ禍で多くの公演中止が続いた間に改めて本を読み、考えを深めた。
「人形は実は動かした方が遣い手は楽なので、気持ちで演じないといけない場面でも、まだまだ動いてしまうのが自分でも欠点としてある。官兵衛は動きをじっと抑えた方がいい場面が多々ある。メリハリを考えたい」(勘十郎)と語る。
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